70.E 通信の形式と通信方式
1. 伝送方式
■ ベースバンド (基底帯域) 伝送
ベースバンド(baseband)とは,信号そのものの帯域という意味で,変調をかけたりせずにそのまま伝送する.
ディジタル波のベースバンド伝送はコンピュータによる処理を考えると便利であるが,伝送距離と伝送速度の限界が比較的低いのが欠点である.
■ キャリア (搬送波) 伝送
キャリア(carrieer)とは一定の周波数をもつ波で,伝送させる信号波形をその周波数に対応させ,ある方式によって変形するためのものである.ベースバンド伝送に対してブロードバンド伝送ともいう.
※ブロードバンド:broadband:広帯域
ベースバンドは周波数の低い伝送になるので,大きな電力成分を持ち,長距離の伝送にはむいていない.また工学的に利用しうる,きわめて広い周波数スペクトルが十分利用できない.原信号を変調して他の信号と帯域が重複しないようにスペクトルを移動させれば,利用可能な帯域幅を効率的に利用することができるのである. ※文献05, p.205
■ 変調・復調
上述したような理由で,広域回線にはほとんどキャリア伝送が用いられ,狭域ネットワークなどではベースバンド伝送が利用される.
この間を取り持つのが,変調・復調(modulation, demodulation)である.
通常「変調」といえば,キャリア(搬送波)として正弦波を用いる.
キャリアの基本パラメータ(振幅,周波数,位相)のうちどれを用いて変調するかで変調方式が定義づけられる.
これらはそれぞれ振幅変調AM,周波数変調FM,位相変調PMと呼ばれる.
※それぞれ AM:Amplitude Modulation, FM:Frequency Modulation, PM:Phaze Modulation
一方キャリアにパルス波を用いた場合,パルス変調と呼ぶ.
※パルス変調:パラメータによって,PAM, PWM, PPM, PCM, DM などの方式がある ← 元の英語を調べてみよう
しかしこれは,本来の変調というよりは原信号の符号化という意味を持っており,変調したあともベースバンド信号である.
したがって,パルス変調した信号を長距離伝送する場合には,さらに通常の変調をかける必要がある. ※文献05, p.206
パルス変調は,ベースバンドであることの利点を活かしながら,ベースバンド信号をより確実に伝送するための手法だと言える.
※パルス変調が通信以外の目的に利用される例も多くある.中でも PCM はアナログデータを質をなるべく劣化なしに記録,通信する方法として音響関係では広く利用されている.CDは44.1KHz/16bitのPCMである.
2. 同期方式
同期方式(synchronization)とは,送信側および受信側が (一定の位相関係のもとに) 同時に動作することを保証する手段である.
そういう動作を行なわないのが非同期式(asynchronous:ASYNC)である.※文献01
同期方式にビット同期とブロック同期がある.以下に大まかな分類を示す.
※文献14, p.59
https://gyazo.com/5f5f635968a43b59017d1f2cbc3884be
3. UART(非同期汎用受送信機)
RS-232Cは主に広域の非同期通信に利用されるが,電子回路同士または電子回路と外部デバイスとの通信では,UARTデバイスとその周辺回路によって様々な応用が展開される.
UARTとは:Universal Asynchronous Receiver Transmitter:非同期汎用受送信機.「ユーアート」と読む.電子回路に実装される集積回路を指すことが多い.UART信号はRS-232Cとは電位が異なる.本テーマの実験に使用しているUSBシリアル変換ケーブルにもUARTチップが使われている.
シリアルI/Fの通信速度: RS-232C規格では速度の上限は固定的ではない.多くのインタフェースの設計上,かつては20kbps程度が上限とされてきたが,近年では,通信チップの高速化によって,12Mbps程度までアップしている.
参考:
▲▲ Polific PL2303というシリアルチップが12Mbps
2023/9/18